先生がいてくれるなら③【完】
泣き虫な俺の恋人は、本当は魔法使いなんじゃないだろうか。
出会ったその日から今日まで魔法をかけられっぱなしで、それは魔法使いが俺の傍にいる限りは一生続くのだろう。
俺のようなしがない人間が、魔法使いに勝てるはずなどない。
魔法使いの魅力に、ひたすらひれ伏すだけだ。
いつもプレゼント類は必要ないと言っているのに、やっぱり用意してくれていた。
アルバイトもしていないし、高校生が親から貰えるお小遣いの額が決して多くないことは、俺も十分に承知している。
それでもどうしても用意したいらしい。
おずおずと差し出されたプレゼントをありがたく受け取り、包みを開けると、伊達眼鏡が入っていた。
かけてみて、「どう?」と見せると、似合うと言った立花の顔がパッと赤く染まる。
……へーえ、そんなに良いんだ?
なるべく普段はしないような表情で微笑みかけてやると、ますます赤くなって、挙動も言動もおかしくなっている。
うん、相変わらず面白くて、可愛い。
俺が「これから毎日これかけて学校行こうかな」と言うと、ファンが増えるから学校でかけるのは禁止、と怒っている。
嘘に決まってんじゃん、自分からそんな面倒に巻き込まれるようなこと、するわけないだろ。
立花の受験が終わったら、これをかけてデートをしよう。
想像するだけで頬が緩む。
あと少しだ、頑張れ、立花。
──ちなみに、この直後にバレンタインなるイベントがあり、めんどくさいながらもなかなか面白かったのだが、その時の出来事はまた別の機会に話すことにする。