先生がいてくれるなら③【完】

厳粛な空気が漂う中、いよいよ、卒業証書の授与が始まった。


1組から順に、担任から名前が呼ばれ、はい、と返事をして起立して行く。


クラスの代表一名が登壇し、校長先生から卒業証書を授与された。



1組が終わり、2組──藤野先生のクラスの授与が始まった。


先生がマイクの前に立ち、生徒ひとりひとりの名前を読み上げる。


はい、と返事をする生徒の目を丁寧に見て、次の生徒の名前を、丁寧に読み上げていく。



先生は……


実際はとても “生徒思い” だと思う。


もちろん私の贔屓目もあるとは思うけど、先生にこんなにも丁寧に、心を込めて呼ばれる2組のみんなが羨ましい。


先生が最後の生徒の名前を読み上げ、クラス代表が登壇した。


次は、私のクラスだ。


同じようにクラス担任から名前が読み上げられ、はい、と返事をして立ち上がる。


立ち上がって視界が開けたのを良いことに、私はチラリと藤野先生へと視線を動かした。


顔は前に向けていても、視線を思わず担任席の方へ向けてしまうのは、もうこの際許して欲しい。


先生方の視線は当然のように、起立している生徒へと向けられている。


不自然じゃない程度に先生を見ると、少し呆れたように目を細められた。


あ、視線を向けたの、バレちゃった。


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