先生がいてくれるなら③【完】
「分かってると思うけど、今から大事な式典があるから、身だしなみだけはきちんと整えておくように。あと、私語厳禁。“最後” に相応しい態度で臨んで欲しい」
他に何か言うことあったっけなぁ、忘れたわ。
まぁ、あとは何度か練習したとおりにやってくれれば、そのうち終わる。
それより問題は、式典が終わった後、だよなぁ。
最後のホームルームが、今から憂鬱だ……。
生徒達を出席番号順に並ばせて、廊下を進む。
教室を出る前にもう一度「私語厳禁」と念押ししたお陰で、皆、無言で俺の後について歩いている。
こうやってお前らを先導するのも、今日が最後なんだな……。
背筋を伸ばして、会場である体育館へと足を踏み入れた。
穏やかな曲が流れる中、静々と列は進む。
パイプ椅子が並べられた体育館には、保護者、来賓、教職員が着席していて、拍手で迎えられた。
凜とした空気が漂い、自然と背筋が伸びる。
クラスの全員が座席の前に一列に並び終え、俺が送った小さな合図を目視して全員が綺麗に着席する。
俺が教職員席へと移動すると、3組──立花のクラスが座席の前へと整列を始めた所だった。
立花は背筋をしゃんと伸ばし、少し緊張した面持ちで正面を見据えている。
同じように担任から合図を受けて、3組の生徒が着席をした。
着席したことによって立花の姿は見えなくなったけど、座る前の一瞬の顔は、ちょっと赤くなってた気がする。
お前、俺を盗み見ただろ……、顔に出すぎ。
相変わらず、だな。