先生がいてくれるなら③【完】

「広夢さん、お忙しいのにすみません、迎えに来ていただいてしまって……」

「ううん、誘ったのはこっちだから、お迎えは当然だよ。気にしないで」



そう、なぜ私がおしゃれをして駅前で広夢さんと待ち合わせをしていたかと言うと、またしても藤野家の食事会に招待されてしまったからなのです……。


当然ながら、今回は孝哉先生抜きで。


ご家族の食事会に他人の私が参加だなんて、前回は孝哉先生がいたからともかく、今回は私ひとり……。


明らかに浮いてるし、前回以上に緊張するし……心臓がドキドキバクバクしてる。



広夢さんの「もしかして緊張してる?」と言う問いかけに、私はコクコクと無言で頷いた。


「大丈夫、今回はナイフとフォークの食事じゃないのを用意させてるって言ってたから。それに、家族だけだし、マナーとかあまり気にしないで『美味しいものを食べに来た』ぐらいの気持ちで大丈夫からね」


「き、緊張しすぎてて、お箸落としたらどうしようって思ってます。それに、お箸でのマナーだって、ちゃんと出来るかどうか……」


「あはは。じゃあね、もしマナーに困ったら、近くにいる人と同じようにすれば良いよ。食べ方、食べる順番、箸の上げ下げの仕方、全部」


「な、なるほど……」


私がコクリと頷くと、広夢さんはニッコリと笑って「でも、明莉さんなら大丈夫」と私を励ますことも忘れない。


広夢さんのアドバイスのお陰で、なんとか頑張って乗り切ろうという気分になりました、ありがとうございます。


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