先生がいてくれるなら③【完】
──卒業証書の授与が始まった。
1組から順に、担任が名前を読み上げていく。
いつかは担任を任される日が来ることは、教員になった時から分かっていたことだった。
私立から公立に移ったことによってその時期は少し遅れたけれど、こうやって担任として一年を全うできたことは本当に感慨深い。
……いや、全うできた、と思っているのは俺だけかも知れないな、至らぬ所は多々あったことと思う。
それでもこうやって教え子達を無事に卒業させることが出来たことは、本当に嬉しい限りだ。
自分のクラスの授与の番だ。
ひとりひとり、名前を読み上げる。
色んな事があった、トラブルも勿論あったし、楽しいこともたくさんあったと思う。
ひとりひとりの名前を呼びながら、その生徒との思い出が思い出される。
手のかかるやつも何人かいたし、その逆で、ほとんど手がかからないやつもいたし、あまり話をしなかったやつもいた。
それでも、それすらも全て、良い思い出となっていると思う。
「倉林悠斗」
「はいっ」
お前には本当に色々とヤキモキさせられた。
立花との仲を疑った時なんか、特に、な。
倉林が立花のことを好きなのはあまりにも分かりやすかったのに、立花に全く気付かれないのは少し可哀想だったけど。
──クラス全員の名前を呼び終える。
「──以上、2組、38名」
クラスの代表が登壇し、校長から卒業証書を受け取った。
卒業、おめでとう。