先生がいてくれるなら③【完】
俺のクラスが終わり、3組──立花のクラスの授与が始まった。
ひとりひとり、担任が名前を呼んでいく。
元気に返事をして起ち上がる者、緊張して声が裏返ってしまう者、既に泣きそうになって声が少し震えている者──。
一瞬一瞬が、ここにいる全員の記憶に残って、また、次に進む為の糧となる。
「立花明莉」
「はいっ」
うん、良い返事だ。
出来れば、俺がお前を呼びたかった。
……いや、もしお前が俺のクラスだったら、俺は今頃クビになってたかも知れないな。
お前は顔や態度に出やすいし、俺もお前を前にすると抑えが利かなくなるから。
返事と共に起立した立花が、一度チラリと俺へと視線を向けたのが分かった。
……おいおい、ちゃんと前向いてろ?
思わず咎めるように目を細めると、立花は慌てて視線を前方へと向け直した。
ばーか。
あとでたっぷり可愛がってやるから、覚悟しとけ。
着席する前にもう一度こちらをチラ見したのを俺は見逃さなかったが、俺は表情を変えずに、心の中で密かに笑った。