先生がいてくれるなら③【完】

「──ところでさっきの先生の事なんだけど」

「は、い……?」

「あの先生と仲が良いの?」

「いえ、特には……」

「そう、……気付いてないんだ」

「えっ?」

「ううん、こっちの話……」


広夢さんが小さな声で呟いた部分が一部聞こえなくて聞き返したけど、適当に流されてしまった。


「なるほど、孝哉兄さんも大変だね……」

「?」

「……なんでもない、気にしないで」


にっこり笑顔の広夢さんに再びはぐらかされて、細川先生に関する会話は強制終了した。



──お食事会のメニューは懐石料理で、全部がとても美味しくて、もちろん残さずいただきました。


テーブルマナーは事前に広夢さんにアドバイスしてもらっていた通り、迷ったらさり気なく皆さんのマネをしてやり過ごして……。


あとで広夢さんに「私、大丈夫でしたか?」って聞いたら「全然問題無かったよ。緊張してたのに頑張ったね」とお褒めの言葉をいただきましたよ。


はぁ、やれやれ、どっと疲れました。



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