先生がいてくれるなら③【完】

俺が来るまで何時間も歌ったからもう声が出ない、とか言いながら、俺が歌ったあと全員一曲ずつ歌って、やっとこの場がお開きになった。


「西之園と市橋は家が隣同士だから良いとして。……倉林、滝川を家まで送れよ」

「はいはい、分かってますよー」


そこまで遅い時間ではないけど、滝川だけをひとりで帰らせるのは、ちょっとね……。


たとえ倉林がどこに住んでいようと──滝川の家から遠かろうと、倉林が送れ。


「それよりセンセーこそ、送り狼にならないようにヨロシクお願いしますよ?」


おい、ニヤニヤしながら言うセリフじゃねぇだろ。


ホントに最後までムカツク男だ。


「お前じゃないから、そんなことしないよ」


倉林にそう返して、立花の手を取る。


「っ、……先生っ」

「……どうせみんな知ってる。気にするな」


それにしても、こいつらが卒業したなんて実感、まだ全然湧かないな。


もうこのメンバーで会うこともないのか、いや、そもそもこのメンバーで会うなんて、校内でも無かったが。


それでも、ずっと一緒にいたような気がするぐらいに心を許せる関係になっているのは、やっぱり立花の役割が大きいのだと思う。

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