先生がいてくれるなら③【完】

高校を卒業するちょっと前に、先生に「私のこと、いつ好きになったんですか?」って聞いたことがある。


最初は言ってくれなかったけど、私があまりにもしつこく聞くものだから、渋々答えてくれた。



「──多分、お前が二年生になった始業式の日の、朝」



思いも寄らない返事に、思わず私が「えっ?」と声をあげると、先生はちょっと照れくさそうに不機嫌そうな顔をした。


「お前、昇降口前で傘回して、水滴飛ばしてた」


そう言ってたっぷりと沈黙したあと……


「あの時に、多分、好きになったんだと思う……」


──そう言った。



そんなに早くから私のことを見てたなんて知らなくて、びっくりしすぎて口をポカンと開けたまま黙り込んでると、「お前のこと、ホントはもっと前から知ってたよ」と言われて、更に驚いた。


「……テニス部のコート、お前の入部当時は数学準備室の前にあっただろ」


そう言えば、そうだったかも……?


……やだ、私、先生にめちゃくちゃ鈍くさいところ見られてた……!?


思わず恥ずかしくなってあたふたとしてると、先生は「ひとりだけやたらと一生懸命な一年生がいるな、って思って見てた」と笑いながら言った。


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