先生がいてくれるなら③【完】
「……孝哉先生には伝えないんですか?」
「言わなければいけないと思いつつ、……彼の反応を思い浮かべてしまうと、なかなか言えなくてね……情けない事だが」
教授のその気持ちは痛いほどよく分かる。
でも……。
「言ってあげて欲しいです。きっと今なら……今の先生なら、大丈夫だと思います」
教授にとっては、小さかった頃も今も、どちらも自分の可愛い息子であることに違いは無いんだと思う。
だからこそ臆病になるんだろう。
でも……きっと真実を知っても先生は大丈夫なんじゃないかな。
少しは傷ついたり自分や教授を責めたりするかも知れないけど、きっとそれは一時的なことで……。
このまま何も知らされずにいるよりも、いま教授の口から真実を聞く方が良いに決まってる。
私の言葉に、教授は「そうだね」と頷いて、「やはり明莉さんには敵わないな」と苦笑した。
「えっ、あっ、……す、すみませんっ、私、生意気でした!」
自分の言ったことを思い出し、私は思わず青くなる。
教授相手に、私はなんて事を…………!
穴があったら入りたい!
子供のくせに、生意気すぎて恥ずかしい!!