先生がいてくれるなら③【完】
「……意味が、分からないんですけど。だったら俺と弟たちとは完全に血の繋がった兄弟って事、ですか?」
俺がそう問いかけると、親父は「いや、違う」と首を横に振った。
ますます意味が分からない。
……どう言うことだ?
「お前と、光貴や広夢とは、半分しか血の繋がりがない事は変わらない」
「だから、どうしてそうなるんです!?」
俺は親父の真意を探ろうと、親父の表情を窺うために視線を合わせた。
親父と、二十年近くぶりに目が合う。
親父の表情は……少し悲しそうに見えた。
この人でもこんな顔をするんだな、……人を騙す時は。
──俺はやっぱり、そんな風にしか思えない。
だから、この後のこの人の言葉を聞いて、俺は愕然とした。
今まで信じてきたことが全て覆されたから──。
「お前の母親は、さっきも言ったが恵美子だ。違うのは “父親”、だよ」
──は!?
「だから、なんでそうなるんだよ!?」
俺は思わずソファから立ち上がり、叫んでいた。
なんでそうなるんだよ!?
だったら……、だったら、今まで俺に、俺たちにずっと嘘を吹き込んできたって事だろ!?
それに──、
もしそれが本当だとしたら、この人は血の繋がりのない俺を二十七年間もずっと育ててきたことになる。
しかも、その子供に、これ以上ないってぐらいに憎まれながら……。
そんな、そんな事って…………!