先生がいてくれるなら③【完】

本当に不思議な気分だ。


写真の中の、生物学的には俺の父親。


目の前にいる、血の繋がりはないけれど俺を育ててくれた親父。


俺はこの二人の男を、恨めば良いのか、それとも感謝すれば良いのか……。


一言では言い表せない様々な感情が頭の中を駆け巡り、どうすれば良いのか分からなくなる。



半ば放心状態の俺を、親父は何も言わずにじっと見つめていた。


俺は……きっとこの人に謝った方が良いんだろうな。


今までの態度は、本当にあまりにも酷すぎる。


だけどなかなか素直に謝るなんて事は、難しい。


申し訳ない気持ちはあるけど……。



そんな俺の心の中を見透かしたように、親父が俺に声をかけた。


「急にこんな事を話して、驚いているだろう。本当に申し訳ないと思ってる」



素直に謝れない俺と違い、親父が謝罪の言葉を続ける。


こう言う所だよな、と思う。


俺とこの人の、決定的に違う所だ──。


光貴や広夢ならこんな時、きっとすんなり自分の非を認めて謝るんだろう。


だけどなかなか俺がそれを出来ないでいるのは、俺だけ父親が違うからなのかも知れない……。



そう言えば俺が最近謝ったのって、──と考えて、あぁしまった、と後悔する。


俺が最近謝ったのは、アイツに、立花にだったな、と思い出してしまったから……。



はぁ、とため息が俺の口から漏れると、親父が眉尻を下げた。


あぁ違うんだ、親父に対してため息を吐いたんじゃない──と言いかけたが、結局その言葉は飲み込んだ。


やっぱり素直になれないのは、俺が天の邪鬼だからなのか……。


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