先生がいてくれるなら③【完】
私は自己嫌悪のあまり、もう授業どころではなくなってしまった。
板書をノートに書き写そうと思うけれど、顔を上げると嫌でも先生の姿が目に入る。
私は俯いたまま、もう顔を上げることが出来なくなった。
先生の説明している声が鼓膜を掠めて、耳を塞いで叫び出したい──そんな衝動に駆られる。
一体、あとどれぐらい、こんな風に先生の授業をやり過ごせば良いんだろう──?
先生が、教室内をゆっくりと歩き始めた。
きっと何か問題を解かせているんだろう。
私は机の上に広げていた真っ白のノートをじっと見つめたままだ。
私の前方を、先生がゆっくりと歩いて来る。
問題を解くフリさえしない私を、先生はどう思うだろうか……。
最後列に座る私の横を通り過ぎる時、私のノートの上に何か白い物が滑り落ちてきた。
──えっ、なに?
ノートよりも一回りぐらい小さな紙に、何かがぎっしりと書かれている。
よく見慣れた、とてもとても、綺麗な字……。