先生がいてくれるなら③【完】
私はそのメモ──と言うには少々大きな紙を、思わず凝視した。
先ほどまで黒板に書かれていただろう数式が、その紙には書かれている。
そして、その下に……、小さな、だけどとても美しい文字が書かれていて、私は思わず驚愕した──。
『授業はちゃんと聞いて、板書も書き写すように。
それから
お節介もほどほどに。
ありがとう』
──私はその文字から目を離すことが出来ない。
先生……、だめですよ、こんなこと書いちゃ……。
誰かに見られるかも知れないし、それに……、それに、私がまた勘違いしちゃうでしょ……?
……ううん、勘違いしても、しなくても、もうどうにもならない。
高峰さんのことがあるから……。
私は、先生の綺麗な字をじっと見つめながら、心の中に渦巻く複雑な気持ちを胸の内に封じ込めようと努力した──。