先生がいてくれるなら③【完】


──たどたどしくも最後まで読み終え、高峰さんは絵本をパタンと閉じて、そっとため息を漏らした。


それと同時に、子供たちの小さな手が、絵本を読み終えた高峰さんにパチパチと拍手を送る。


私も一緒に拍手をした。



──高峰さん、良かったですね、ちゃんと子供たちに届きましたよ……。



そう声をかければきっと彼女はプイッとそっぽを向いてしまうだろうから、私は心の中でそっと呟いた。


不機嫌顔の高峰さんは「下手だったんだから拍手なんかしないでよ……」と下を向いているけど、きっと少しは嬉しかったんじゃないかな。


だって、顔が、少し赤い。


それに、不機嫌そうな表情だけど、いつもより瞳が優しい。



子供たちは再び、「次はこれ読んでー!」「今度はこっち!」と競い合うようにして絵本を私たちに差し出している。



「みゆきお姉ちゃんはちょっと喉が渇いちゃったので、次は、あかりお姉ちゃんが読みまーす! さぁ、どれにしようかな~?」



私は高峰さんに事前に買っておいたミネラルウォーターを差し出し、子供たちに笑顔を向ける。


子供たちは私に注目し、未だ戸惑ったような表情のままの高峰さんから再び安堵のため息が漏れるのを、私は見逃さなかった──。



子供たちの透明感溢れる感情や反応は、高校生の私でさえ、眩しい。


嘘偽りのない言葉や瞳が、時には私の心を大きく揺さぶる。


そんな風に心が温かくなるような何かが、高峰さんにも届けば良いなと思う。


そう思う、心から────。



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