先生がいてくれるなら③【完】
「……あなたは分かりやすくて良いわね。見たままの、お節介でお人好しで、頭悪い感じそのまんま」
「……」
か、返す言葉もございません……。
でもちょっとお口が悪すぎると思うんですよ、もうちょっとだけオブラートに包んで言って頂かないと、私のハートがヒビだらけです……。
「まぁ、あなたの事なんてどうでも良いわね」
口の端に笑みを浮かべ、高峰さんは話を続けた。
「私はこう言う性格だから、相手もハッキリものを言う人が好きなの。その点、藤野先生は私のタイプそのままだった。『彼女がいるし、そもそも生徒は恋愛対象外』ってハッキリ言われたけど、それも私にとっては魅力の一つだった」
先生は、前の学校では本当に今とは全然違う、素のままだったんだなって思うと……先生の口から聞いてはいたけど、やっぱりなんだか不思議な感じがする。
「私は先生に適当にあしらわれるたびに、絶対落としてやるって思ったわ。自信だってあった。だって先生の彼女は、きっと私と同じタイプだもの」
高峰さんと同じタイプ──?
「顔も、性格も、選ぶ相手も」
高峰さんはそう言って、わざと妖艶に微笑んで見せた。
……あぁ、なるほど。
美人で、頭が良くて、相手の男性にも自分と同じレベルを要求する、って事か。
私が納得した表情をしたのを見て「あなたは私とは真逆ね」と言ってまた私のハートのヒビを平然とした顔で増やした。
「絶対落とすって決めて、私は相手の女の事を徹底的に調べたわ。どこに住んでて、どんな仕事をしてて、先生とどんな風に付き合ってるのか。半年ほど調べればだいたいの事が分かった。女の方が熱を上げてるだけで、先生は『彼女がいる』って口では言ってるけど、それほど相手のことを好きじゃないって事もすぐ分かった」