先生がいてくれるなら③【完】
先生が私立高校を辞めた理由──。
有名な私立の進学校を辞めて公立に来るなんて、って思ったけど、そう言うことだったんだ……。
「先生の自宅のマンションは知ってたから本当は連日張り付きたかったけど、私はそのタイミングで高校三年生……つまり受験生になったから、それどころじゃなくなってしまって」
高峰さんはそう言って肩を竦めた。
「私は両親の要求に応えるために、良い大学に受かる必要があった。だから1年間は先生を追いかけるのをやめたわ。やっと大学生になって新生活にも慣れて来た頃、先生のマンションに行ったの。もちろん外で様子をうかがってただけよ」
いえ、様子をうかがってただけでも十分怖いです……とは言えず、私は黙って高峰さんが話を続けるのを待った。
「そうしたら、そのうち頭の弱そうな子が先生と仲良くマンションに入って行くんだもの、びっくりしたわ」
──あの、その “頭の弱そうな子”って、……。
「……もちろん、あなたの事よ」
──ですよね。
私はがっくりと肩を落とした。
間違ってないけど、そこまでハッキリ言われるとさすがにちょっと傷つくかも……。
私のハートは最早、粉々です……。
「こんな子のどこが良いんだろう、先生って趣味が悪かったんだわ、って、ずーっと思ってた」
酷い言われようだ。
そして、何一つ間違ってない事に、私は思わず苦笑するしかない。