先生がいてくれるなら③【完】
「でも……それって、私の……、私の間違いだった」
え……?
ど、どう言う意味……?
「……ここに入院して、あなたが私にお節介をやくようになって、初めて分かった……。どうして先生が、あなたを選んだのか……」
高峰さんの気の強うそうな瞳が、一転、ゆらりと揺れて、なぜか急に泣きそうな表情になった。
そして、着ていたカーディガンのポケットから “あるもの” を取り出し私の前に並べて見せる。
それは、あのボイスレコーダーと、彼女の携帯電話だった。
それを見た私の表情が思わず引きつる。
どう言う話の展開で、いまこれが出て来る必要があるんだろう。
私の頭が悪いから理解できないだけなのかな……。
私が明らかに困惑の表情をしていたのを見かねた彼女は、フッと微笑んだ。
──とても、たった二つ年上なだけには見えない、大人びた綺麗な表情。
私と二歳しか違わず、それでこの差だから……私がいかに幼稚なのかが分かる。
敗北感しかない、人間としても、女としても……。