先生がいてくれるなら③【完】
「私の目標、聞いてくれないの?」
「えっ、あ、えっと、聞いて良いんですか?」
「聞いて欲しくて話を振ったのに」
「あっ、ぜひ、ぜひ聞かせて下さいっ」
なんとも変なやり取りだけど、どこまでも、高峰さん “らしい”。
「……あなたのお節介で、小児科の休憩室に行ったでしょ? 私、子供なんか苦手だって言ったのに、あなたが強引に、無理矢理連れて行った」
「あぁ、はい、すみません……暇そうだったもので……」
「その後も、嫌がる私を何度も連れて行ったじゃない?」
「……はい、すみません……」
「あの子達って、いつもすごく楽しそうにしてるから、私、知らなかったのよ……、あそこにいるほとんどの子が、ものすごく大変な思いをしてるって……。だって、いつもすごく元気に笑ってるんだもの」
そう、小児科病棟に入院している子たちは、長く入院しているか、何度も入退院を繰り返している子が多い。
特にあの休憩室に集まってくる子のほとんどが、そう言う長期入院児だ。
大きな手術を何度もしていたり、苦しくて辛い治療を受けている子ばかりで。
私も、自分が入院して、あの休憩室を訪れるまで全然知らなかった。
私のお母さんは小児科病棟の看護師だけど、仕事のことを家であまり詳しく話したりはしない。
特に、子供たちの事を細かく話したりは絶対にしないから……。
だから私だって、入院するまでは何も知らなかったのだ。
あんなに眩しい笑顔を向けてくれる子たちが、実はあんなに大変な思いをしていたなんて……。