先生がいてくれるなら③【完】
「いつもニコニコしてるから、たいしたこと無いんだと思ってた。でも、自分の部屋に戻ろうと思って、ふと帰り際に子供たちの病室を覗いたら、すごく苦しそうにしてる子がいて……。よく見たら、どの子も、みんな何か辛い治療や症状を抱えてた」
そうなのだ。
あの子達は、いつだって休憩室では笑顔だけど、実際は長期の入院が必要なほどの何かを抱えている。
辛いからこそ、休憩室で楽しい時間を過ごしたいんだ、って知った時は、私も泣きそうに……ううん、泣いた。
「あの子達やその家族を見てて、ときどき私もすごく辛くて……」
高峰さんの言葉に、私も深く頷く。
「私なんか、五体満足に生まれて、今までたいした苦労なんか知らないで育った……。なのに、いつも心の中では不平不満ばかりで……」
そう言って彼女は唇を噛んだ。
「あんな小さな子たちが、あんなに、あんなに頑張ってるのに、私、何やってるんだろうって……」
彼女の瞳に涙が浮かぶ。
「私の家はね、父がそこそこの規模の会社の経営者なの。私は一人娘で、女だけど跡取りとして育てられたわ。常に人の上に立てる人物になるように教育された。でも……それは私にとって苦痛でしかなかった。私は誰かの上に立ったりするのは本当は凄くイヤだったから」
え、そうなんだ……。
人の上に立って人を顎で使うのとか、激しく向いてそうだけど……、と言う私の感想は口にしないでおく。
だって、命が危ない。