先生がいてくれるなら③【完】
「だってそうですよね? 私すごく大変な思いをしてあの日から今日までやってきたのに、“ごめんなさい” で済ませられるわけないじゃないですかっ」
私の厳しい言葉に、高峰さんは眉根を寄せながらも、小さく頷いた。
「それに、私のお陰だって言うなら、最後までちゃんと見せて下さいよ」
「……最後、まで?」
「そうです。高峰さんが目標とする仕事に就いて、子供たちをサポートしてるのを見届けるところまでちゃんと見せてくれなきゃ、私、絶対に許せないです」
だから、勝手にひとりでどこかに消えるなんて、私は許さない──。
私が真剣な表情で彼女にそう訴えかけると、彼女は小さくため息を吐いた。
私が投げた言葉の意味に気がついて、「……だからあなたはお節介だって言うのよ」と、涙ぐみながら笑った。
「これぐらいの嫌みと予防線は、許していただかないと。それに、私、本当に高峰さんが病気の子供たちをサポートする仕事に就く所が見たいんです」
高峰さんは目の縁に滲んだ涙を指で拭いながら、私の言葉にゆっくりと小さく頷いた。
「約束ですよ? 勝手にひとりでアメリカ留学とかしないで下さいね?」
「……イヤだけど、分かった」
相変わらず一言多いんです。
でも、“分かった”って言ってくれて、私はホッとした。