先生がいてくれるなら③【完】
私が言葉選びに困っていると、市橋君が「椿には僕から説明するよ」と言って、何やら椿の耳元で小声で説明を始めた。
椿は時々相槌を打ちながら、「あぁ、……なるほど」と言って大きく頷いた。
「そう言うことか」
どう言うことか分からないけど、市橋君の説明によって私と藤野先生の関係と、今の状態の大体の部分が伝えられたらしい。
「そうか、それで。納得したわ」
「え??」
「明莉が早退した日あったでしょ? ちょうどあの時、数学だったじゃない?」
椿の言葉に、私は頷く。
「確かにあの先生はあんな風に体調の悪い生徒に対して気遣いはするけど……そのあと『ありがとう』なんて言ってるところ聞いたことないもの」
「……ごめん、私、全く理解できてない」
この場にいる全員が私と同じように理解出来ていなかったようで、みんな不思議そうな顔をしている。
「そもそも、明莉が早退するって言って教室を出て行った後に先生が『危ないから昇降口まで付き添ってあげて』って言ったのよ。だから私は明莉を追いかけたの」
そう言えば、フラフラと階段を降りようとしてた私を追いかけてきてくれて、支えてくれたっけ。