先生がいてくれるなら③【完】

好きになってはいけない人を好きになってしまったけれど、“好きになったこと” を後悔はしていない。


好きと言うその感情自体に罪は無いと思うから。



このままずっと、時が止まってしまえば良いのに。


だって、どれだけ『忘れない』と強く思っていても、大抵は時間と共に記憶が薄れていく。


私が先生を好きだったことも、私が先生にした酷いことも、そしてその罪を忘れないでおこうと強く誓ったことも、きっと……。



だから、このまま時間が止まってしまえば、きっと、ずっと忘れないでいられる。


甘酸っぱくて、愛おしくて、ほろ苦くて、胸が締め付けられるように痛くて、涙が枯れるまで泣くぐらい悲しくて、後悔ばかりしていた、私の狂ったような感情を──。



でも、私がどれだけ強くそう願っても、無情にも時間はどんどん流れて行く。


『いま』と口にした瞬間でさえ、一瞬で過去に変わる。


そして、過ぎ去った過去は、もう変えられないのだ。



だったらこれからは、後悔しない生き方をしよう。


精一杯、前を向いて──。



< 82 / 352 >

この作品をシェア

pagetop