先生がいてくれるなら③【完】
好きになってはいけない人を好きになってしまったけれど、“好きになったこと” を後悔はしていない。
好きと言うその感情自体に罪は無いと思うから。
このままずっと、時が止まってしまえば良いのに。
だって、どれだけ『忘れない』と強く思っていても、大抵は時間と共に記憶が薄れていく。
私が先生を好きだったことも、私が先生にした酷いことも、そしてその罪を忘れないでおこうと強く誓ったことも、きっと……。
だから、このまま時間が止まってしまえば、きっと、ずっと忘れないでいられる。
甘酸っぱくて、愛おしくて、ほろ苦くて、胸が締め付けられるように痛くて、涙が枯れるまで泣くぐらい悲しくて、後悔ばかりしていた、私の狂ったような感情を──。
でも、私がどれだけ強くそう願っても、無情にも時間はどんどん流れて行く。
『いま』と口にした瞬間でさえ、一瞬で過去に変わる。
そして、過ぎ去った過去は、もう変えられないのだ。
だったらこれからは、後悔しない生き方をしよう。
精一杯、前を向いて──。