先生がいてくれるなら③【完】
なんで岩崎がここにいるのかと言う疑問と、アウェー感たっぷりの部屋の空気に俺は思わず眉根を寄せた。
親父と光貴は親子だから似てるとしても、なぜ岩崎まで同じ雰囲気を纏っているのか──お前らは実は親子だとか言わねぇだろうな!?
絶対に違うことは分かってるけど、それでも藤野家の二人と岩崎はとてもタイプが似ていて……俺だけがあまりにもこの三人からかけ離れている事に疎外感を感じてしまうのだ。
俺が恐ろしくくだらないことを考えていると、岩崎がニコニコしながら俺に話しかけてきた。
「お前はいっつも難しい顔してるねぇ。ま、俺が今から色々すごーく楽しいお話をしてあげるからさぁ、覚悟して聞いといて」
そう言いながら長い足を組み替える仕草は、男の俺から見てもあまりにも妖艶で、なんでこんな男が教師なんかやってるんだろうって、もう何千回目かの疑問が頭の中に浮かぶ。
「……前置きはいらないからさっさと話せ」
「はいはい、相変わらずせっかちだね。まぁ確かに時間が無いから、これぐらいにして……本題に入るよ」
今までヘラヘラと笑っていた岩崎の表情が一変し、真剣な表情──少し怖いぐらいの顔に変わった。
──何の話があるって言うんだ、しかも親父と光貴の前で。
まだ話に加わる気が無いのか、光貴は俺にお茶を用意するために席を外しているし、親父は先に用意されていた紅茶を優雅に飲んでいる。