先生がいてくれるなら③【完】
「まぁ、話ってのは、あれなんだよ。聞きたくないとは思うけど、高峰の話なんだよね」
「──分かってて話すんだったら、覚悟はあるんだろうな?」
「あぁ、それ前に電話でも言ってたな。今回はあるよ。でも、本当に覚悟しなきゃいけないのはお前の方だけどね」
「は? なんで俺が……」
意味が分からない。
そもそもその話をどうしてこの部屋でやらなきゃならないのかが、まず理解出来ない。
「前に電話で、俺、聞いたよね? 最近高峰の事で何か聞いてないかって」
岩崎の問いかけに俺は渋々「あぁ」と返事をする。
「実はさ……、学校関係者や卒業生の周りで高峰の事を色々聞き回ってる男がいてね。その人、俺んとこにも来たわけよ。何を嗅ぎ回ってるのかと思ったら、高峰の事で。どんな生徒だったかとか、今何してるか知ってるか、とかで」
光貴が俺の前に紅茶を置いて、岩崎の隣のソファに腰掛けた。
光貴はもう知っている話なのか、特に何の反応もせず、表情を変えること無く座っている。
「もちろん、“元” とは言え俺の生徒だった子の事を得体の知れない男にベラベラ喋るほど俺もバカじゃ無いから一言も教えてやらなかったし、逆に俺がその男の事を質問攻めにしてやったよねぇ」
話し始めた時は真剣な表情だったのに、いつの間にかいつもの表情でヘラヘラと笑っている岩崎に、俺は思わずイラッとした。
「ま、相手は『何もやましい所が無いから』って言って、名刺くれたよ。探偵さんだった」
「──探偵?」
「そ、探偵。それでねぇ、俺はだいたいの事は察した」
「だいたいの事……?」
「……『あ、高峰がまた何かやったな』って」
俺は思わず目眩がして、目をギュッと瞑って右手の手の平を額に押し当てた。