先生がいてくれるなら③【完】


──あぁ、“あの時”。


屋上で、立花に電話がかかって来た、あの時──。


あいつの様子がおかしかったのは、そう言うことか。


やけに青ざめてると思った。



「もうここまで来るとさぁ、全部知りたくなるじゃん? 立花さんと高峰の間に何があったか」

「……知らなくていいと思う」

「またまた~。お前だって知りたいくせに~」

「……」

「そんなわけで、立花さんが高峰の病室に行ってる間に俺はお前の弟さんに接触したわけですよ。だって廊下に立ってるんだもん~。話しかけなきゃ損でしょ?」


お前の損得勘定は一体どうなってるんだよ、意味不明だし。


「それでね、探偵を雇ってたのは、こちらの藤野教授だって分かったわけですよ」


「──は?」


「だから。探偵を雇って色々調べてたのは、お前の親父さんと、弟さんだったの。お前、日本語ちゃんと分かる? 今から俺が現国の授業でもしようか??」


くそめんどくさい男だな、余計なお世話だ、お前の授業受けるぐらいなら小学生からやり直す方がよっぽどマシだわ。


そんでもって、首コテンって傾げるのもやめろ、お前のその仕草で何人の女子生徒が魂抜かれたと思ってるんだ。



「探偵さんがヘボだったわけじゃないけど、過去の高峰の所行はさすがに分からなかったらしくってねぇ。そりゃそうよ、学校関係者では俺とお前しか知らないもん。まぁ高峰の同級生たちからは、あんまり良くない評判が語られたみたいだったけど」


「岩崎先生のおかげで、こちらも色々分かりました。ありがとうございます」


光貴と親父が、岩崎に頭を下げている。


なんか珍しい光景だけど、俺はいまそれどころじゃ無い。

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