----未定----
その痛みは来なかった。

え?

不思議に思って目を開けると

目の前に男の人の顔があった。

驚いてその腕から逃げようとしたけど、体が重くて動かない。


「大丈夫じゃないくせに強がるな。」

そういって私をまたベッドに戻した。

「熱だってまだ少しあるんだから無理するな。」

「でも、これあなたのベッドなんじゃ、、、、」

「そんなの気にしなくていい。寝るとこなら他にいくらでもある」

優しさなのか何なのか。表情一つ変えないで淡々と話す彼が少し怖かった。

「ごめんなさい」

いていいといわれても、申し訳なさが大きかった。

「そんなに謝らなくていい。俺がいいって言ってるんだ。気にせず体調が戻るまで休むといい」

これがこの人なりの優しさなんだと伝わってきた。

「ありがとうございます。 えっと、、、、」



「蒼(そう)」

「え?」

「蒼だ。俺の名前」

ほんとに不器用な人だな。心からそう思った。

「ありがとうございます。蒼さん」

「ああ」

「私は遥(はるか)です。大園遥」

「遥、、、」

蒼さんが私の名前を静かに繰り返した。

「俺はこれから用事があるんだ。夕方には帰ってくるからそれまでは寝ているといい。

トイレや風呂は自由に使ってくれて構わない」

それだけ言うと蒼さんは出かけて行った。


まだ頭が痛くて、蒼さんに言われた通り眠りについた。
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