君に伝えたかったこと
帰りの電車の中、手の中にはさおりから手渡された雑誌があった。

パラパラとめくってみる。

(ほんの半日だけ空けてくれればいいの。撮影なんかパッパっと終わっちゃうし。
もちろんギャラも出るわよ。たいした額じゃないけどね。それに顔だってほとんどわからないから・・・)

頭の中をそんな言葉が通り抜けていく。

モデルなんていう仕事に興味なんてなかった。
それどころか、どんなに仲の良い友人の頼みでも、これだけは聞けないと思っていたはずなのに、結局は完全に断りきれなかった。

YESともNOとも言えないまま、まんまとさおりのペースに巻き込まれてしまったようだった。

それでも、ささやかな抵抗ともいうべき三つの条件をつけた。


写真の大きさは切手サイズ程度
正面からの撮影はしない
なるべく早く撮影は終わらせる


こうして雑誌モデルという仕事をなんとなく流れで引き受けたものの、なんの実感も湧かなかった。

断るためにわざわざ渋谷まで出て行ったにもかかわらず、いつのまにかさおりのペースに引きずり込まれてしまう。

(ホントに自分が雑誌になんか載っていいの?)

美貴恵はひとり大きなため息をついた。
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