君に伝えたかったこと
美貴恵は今が幸せだからこそ、色々な未来を考えてみた。
良いことも悪いことも。

(私、今のままじゃダメだ。離れていても芳樹のことを忘れられなかったし、今は私が望んだようになったけれど。 また、いつか、私が結婚していることが、二人、そして芳樹の道を塞いでしまうかも知れない)

そう思っていた。

今、美貴恵の目の前には避けて通ることはできない、大きな亀裂がある。
避けられないのなら、立ち止まって引き返すか、勇気を出して飛び越えるか、どちらかを選ぶしかない。

『私と、将来どうなりたい?』
 
お互いが離れている時には、見えてこなかった答え。
いくら考えても、想像できなかった二人でいる未来。
しかし、今はちゃんと声を聞き、顔を見て、体温を感じることができる。

それが、美貴恵の大きな力になっていた。

(次のデート、たくさん話そう。いっぱい芳樹の顔を見よう。一番近くにいよう。そして、ほんの少しだけ、私に勇気を下さい)

いつものように芳樹からの連絡を持つ平凡な一日の中の、特別な時間。

もう、あの時のような悲しい思いはしたくない。同じ間違いを繰り返さないために、しっかりと答えを掴んでおかなければ、また芳樹と離れ離れになってしまう。

他人からすれば、自分勝手でワガママかもしれない。

でも、もう気にしない。

美貴恵の決心だった。
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