君に伝えたかったこと

思い出の場所

二人は、初めてデートした街へやってきていた。
これは美貴恵がリクエストした場所だった。

あの時と同じパーキングに車を停めて、歩き出す。
初めて手をつなぎ、初めてキスした場所。

お互いに口に出さなかったが、確かめるようにゆっくりと通り過ぎる。

「そうそう、初めてのデートの時さ、この場所で美貴恵、思いっきり転んだんだよな」

「あーっ!アハハハハハ。そうだったねー」

芳樹と腕を組んだまま大きな声で笑う美貴恵。

「最初からびっくりしちゃったよ。マンガみたいな転び方するからさ」

「ねー、芳樹と手をつないでなかったら、きっと流血騒ぎで大事故になってたよ」


お互いが同じ思い出を共有できる。
あのときから一緒にいた人と今も一緒にいる。
ふたりはそれを何より嬉しく感じていた。


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