君に伝えたかったこと
電話の相手がすぐに何者であるかを理解したものの、次の言葉が出てこない。

何を言えばいいのかわからずに黙っていると、電話の向こうの男性は事務的に話し始めた。

「編集の伊藤さおりさんからのご紹介で電話させていただきました。撮影の件でご連絡したのですが・・・今回は撮影にご協力いただけるとのことで、ありがとうございます」

「はい 聞いています」

ひとこと返事を返すだけで精一杯だった。
電話の向こうから聞こえてくる言葉を聞きながら

(どうしよう はじめましてって挨拶された・・・私も挨拶しないと・・・)

気ばかりあせる。

(無愛想な女だと思われてるんだろうな・・・)

美貴恵はなかなか緊張が取れず言葉が出てこない。

しかし、そんな思いとは関係なく電話の向こう側では撮影の話がどんどんと進んでいく。

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