君に伝えたかったこと
撮影が始まって数時間後、美貴恵の初モデルの仕事もほぼ終わりかけた頃、一台のタクシーが入ってくる。

ドアが開き、降りてきたのは今回美貴恵を悩ませた張本人のさおりだ。
他の仕事が片付いたので、こちらの現場にやってきたのだろう。

「美貴恵さーん、どう?」

おどけた様子でさおりが声をかける。

「何が?」

少しだけ呆れ顔の美貴恵がわざと不機嫌そうに答える。

「楽しかったでしょ?モデル気分で」
「なに言ってんのよ」

さおりの顔を見て緊張がほぐれたのか、いつものように気楽なおしゃべりは楽しかった。
二人が話し込むその間に撮影機材は次々と片付けられ、あとは帰るだけの状態になっていた。

「さおりさん、とりあえず今日の撮影は無事に終わり」

「ご苦労様」

「じゃあ、あさって編集部に行くから、詳しくはそのときにでも」

「了解。今日はお疲れさま。ちゃんと美貴恵のことも送ってあげてね」

「了解です」


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