君に伝えたかったこと
「澤田です。今駅に着きました。いまどちらにいらっしゃいますか?」

「こんにちは 私改札の横にいます。澤田さんは?」

「あ、車でロータリーに入ってきました。白いクルマです」

「えーと 見てみますね。あ、あれかな?」

「あ、僕もわかりました。そのまままっすぐです」

そういうと電話は切れ、視界の中にあった白い車がゆっくりと近づいてくる。
そして止まった車から芳樹が降りてくるのが見える。

お互いの声が聞こえるほどの距離に近づくまでの数秒。

(あっ、私・・・)

この瞬間、自分がこの場所に来たかったんだとはっきりと確信した。

「こんにちは」

挨拶をしながら近づいてくる、その人を待っている自分。

美貴恵は間違いなくこの場面を心のどこかで想像していた。それは昨日の電話を受けてからだったのか、それとももっと前からだったのか…。
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