君に伝えたかったこと

思い切って

喫茶店に入って1時間も経つころには、雑誌の話題もすっかりと置き去りにされ。二人はお互いのプライベートの話で盛り上がっていた。

普段は特別なことなど何もない美貴恵にとって、芳樹が話すマスコミ業界や撮影のこと、これまで経験したバイトの話や将来の夢は興味深いことばかりだった。

目の前でいろいろなことを楽しそうに話すこの男性を、とても不思議な気持ちで見ていた。
次はどんな言葉を聞かせてくれるんだろう、とついつい期待してしまう。

ひとしきりお互いの話で盛り上がったころ、ふと美貴恵は時計を見る。さっき駅前で会ったばかりだと思っていたが気がつけばすでに3時間。

「そろそろ買い物に行かないと」

小さな声で帰らないといけないことを告げるのだった。

「あ、もうそんな時間ですか。じゃあ、また駅まで・・・あ、家まで送りますね」

家まで送ってくれるという、その言葉を断らなかった。

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