君に伝えたかったこと
家に向かう車内。

あと二つ信号を過ぎれば美貴恵の家に着くというところまで来て芳樹は、急に車を道の端に停車させた。

「どうしたの?」

「あの、今度仕事とかじゃなくてデートしませんか? あ、もちろん美貴恵さんがよければですけど」

美貴恵は戸惑いもせずに次の瞬間にこう答えていた。

「いいですよ。私なんかでよければ」

「ホントですか うれしいな。絶対に断られると思ったから。思い切ってよかった!」

芳樹はまるで子供のようにはしゃぎながら車を発進させた。

「じゃあ、あとで連絡しますね。あ、電話よりラインのほうがいいですよね。」

美貴恵が家に帰り夕食を作りながら、リビングでつけっぱなしにしておいたテレビの音を何気なく聞いていた。
夕方の時間、少し前のドラマの再放送。

テレビの中で主人公が「みきさん」と誰かを呼んでいた。
それを聴いた瞬間に美貴恵はふと思いついたように顔を上げた。

(そういえば今日。彼、私のこと苗字じゃなくて名前で呼んでた・・・? 不思議・・・全然気が付かなかった)

違和感などどこにもなかった。
二人の時間がずっと前から同じように流れていた、そう思えるほど自然だったから。


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