君に伝えたかったこと
しかし、こうして目の前に飾ってあるネックレスをあらためて見ると、やはり美貴恵は初めて見た日と同じように惹かれるのだった。

すると芳樹が

「このネックレス・・・おかしくない?」

とつぶやく。

「なんで?」

「だってさ、確かにリングがふたつのデザインだけど、ペアじゃないよね。でもホラ」

そういって芳樹が指差す先には(ペアネックレス)と書かれたプライスボード。

「あ、ホントだ。もうひとつ同じものがセットなのかな?」

ちょっと不思議なそのネックレス。
どうして一個しかないのにペアなのか? 
その理由が知りたくなった二人は店に中に入ってその理由を聞くことにした。

二人を出迎えてくれたのは白髪の男性だった。

「いらしゃいませ」

「あの、そこに飾ってあるネックレスなんですけど」

「ああ、そのネックレスですか」

「ペアってことはもうひとつあるんですか?」

男性は落ち着いた口調で話し始めた。

「実はここに飾ってあるものはすべて私の手作りです。まぁ店自体が趣味のようなものですから
あまり高価なものはありませんし、多くの商品もありませんが…」

そう言うとその店主はショーケースからネックレスを取り出して美貴恵の掌にそっと乗せた。

「お客様がおっしゃる通りペアネックレスとは名前がついておりますが、このネックスレスは1点だけです。」

(それじゃあペアじゃないけど)

気持ちを見透かすように店主は話を続ける。
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