君に伝えたかったこと
メールで始まる一日。
それでも会えない日に、何気ない一言を送ったり、電話を待ったり。
美貴恵にとっては、それが今一番大切なことなのは確かだった。
しかし、現実の生活は、楽しいことだけでは成り立たつはずもない。

芳樹の恋人である自分。
結婚している自分。

ふたりの未来・・・

今まで何の疑問も抱かずに淡々と過ごしていたはずの毎日が、芳樹と出会ったことで、その意味が変わってしまったのだ。

(私は誰と一緒にいたいの? 今何をすればいいの? 私の気持ちが向いている先は芳樹…。 ふたりにはどんな未来が待っているの?)

出るはずもない答えを一人で探そうとする美貴恵。
考えれば考えるほど、自分の立場がわからなくなる。

(やめた! いくら考えたってわからないっ)

美貴恵は頭の中によぎるモヤモヤを振り払うかのようにソファーから立ち上がった。
その瞬間にメッセージが届く。

『何してるの? 明日は久しぶりに仕事ないんだ。逢えるかな? あとで電話するね。』

美貴恵はそのメッセージをずっと待っていた。
以前から休みが取れたら朝からデートをしようと約束していたからだ。

飛び上がりたくなるほど嬉しいはずなのに、すぐ返事が出せなかった。

(本当にこのままでいいの? 自分の気持ちだけで…。ちゃんと話しておかなくちゃならないことがあるんじゃないの?)

たくさんの時間を一緒に過ごして、芳樹のこともたくさん知ることができた。

しかし、その裏側で

(私はすべてを捨てて飛び込んではいけない)

という気持ちがあることもまた事実だった。

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