君に伝えたかったこと
大志は大学を卒業後、芳樹の後を追うようにマスコミ業界に飛び込み、最近になってようやく仕事が来るようになったカメラマンだ。

大志自身は編集プロダクションの社員をしているが、いつかは独立してフリーカメラマンになりたいという思いが強く、なにかと芳樹を頼ってくるのだった。

まだ実績の無いカメラマンの仕事は簡単な撮影ばかり。
事あるごとに電話してくる大志の面倒を見ることも少なくなかった。

ときには自分で請け負った仕事の手伝いをさせたり、実績になるような撮影を任せることもあった。

「もしもし」

「あっ大志っす。お疲れ様っす。今電話大丈夫っすか?」

「あのさ、どうでもいいんだけど、イヤどうでもよくないか。お前もしかすると・・・ナントカッスって言うのが敬語だと思ってないか?」

「え? 違うんっすか?」

「はぁ~」

芳樹は携帯からいったん耳を離し、一呼吸おいて会話続ける。

「近いうちにお前と会う機会もあるだろうし、説教はそのときでいいわ。で? どうした?」

「いや、この前話してた新しい雑誌の仕事どうかなと思って。何かオレも手伝えませんかね?」

「これからちょうどその件で打ち合わせに行くところだよ。今日の夕方には何らかの結論が出せるとおもうから、そしたらオレから電話するわ」

「マジっすか!! オレなんでもやりますから、絶対に連絡くださいよ。待ってるっす」

「ああ、じゃあ連絡するから」

「それなら、今夜どっかで飲まないっすか? 渋谷あたり」

「今夜?」
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