君に伝えたかったこと
大志と話している途中、ふと立ち止まる大きなショーウィンドウの前。
視線の先には夏らしい色合いのスカートを身に着けたマネキン。
そして首から下げられたネックレスは、白いボディの上で優しく光を放っている。

(かわいいネックレスだな。それにこの洋服も美貴恵の好みかも…)

自然とそんなことを考えてしまうのだった。
しかし、次の瞬間、美貴恵がもう自分のそばにはいないという事実に引き戻される。
それでも、事あるごとに美貴恵の姿を心の中で追ってしまっていた。

(彼女が好きだった色、喜びそうな小物、美貴恵なら・・・)

美貴恵がそばで笑っていたあの時間には、こんなことを考えるのもごく当たり前だったこと。
しかし、美貴恵のことを考える時間の景色は、あの時から新しくなることは無かった。

二人の想いは止まったまま、時間だけが過ぎていく・・・。

「もしもーし!! 芳樹さん! どうします? 今夜」

電話の向こうで大志が声を張り上げている。

「あっ 悪い。ちょっと聞こえなかった。で?なんだっけ?」

「だから今夜、どこで飲みますか?」

「じゃあ、会議が終わったら電話するわ。いつもの店でいいだろ、7時くらいな」

「了解っす。」

ショーウィンドウに写る自分の姿。

「いまさら何考えてるんだオレ・・・」

一瞬だけ透き通った空を見上げ再び歩き出す。


元気ですか? 
オレは今日も仕事で都内にいます 
いつものように…いままでのように…

今は届かない思いが、夏を待つ真っ青な空に吸い込まれていく。
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