君に伝えたかったこと
それでも、辛さに耐えながら流れた時間は、少しだけ落ち着きを与えてくれたこともたしかだった。

美貴恵は久しぶりに街へ出かけようとしていた。
目的もなく街を歩く。
出逢ったころの寒さも、楽しかった桜の季節も過ぎ去ってしまった街。

芳樹と出会う前の自分に戻れるのか?
それとも、もう二度とあのときの自分には戻れないのか?

いつも隣にいてくれた芳樹の姿も今は見えない。

歩くときも一人、話しかける相手もなく淡々と前に進むだけ。
あのときに別れを告げたことを後悔していないといえば嘘になる。

しかし、それが正しい選択だったかと聞かれれば、半分はYES、半分はNO。

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