冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
第一章 恋のはじまり
第一章 恋のはじまり
素敵な人と恋愛して、結婚してかわいいお嫁さんになりたい。
女の子なら一度くらい自分だけの王子様との恋を思い描くだろう。
わたしだってそうだった。
だからずっと努力し続けてきた。
流行を適度に取り入れ、美容部員という仕事柄美容にも人一倍力を注いできた。
持って生まれたものは変えられないけれど、努力でなんとかなる部分は完璧にしてきたつもりだ。
出会いだって積極的に求めてきた。いいなと思った人に自分からアピールだってした。待っているだけじゃダメだってわかっていたから。
でも……だからといって、全部うまくいくわけじゃない。
わたしは素敵な人と結婚もしなかったし、かわいいお嫁さんにもならなかった。
努力が実らなかったのかって?
そうじゃない。努力の方向が間違っていただけ。
山科瑠衣、二十七歳。
小さな頃に思い描いていた未来とは少し違うけれど。
わたしは今、幸せです。
明かりを絞った狭いアパートの中で、宝物を見つめてそう呟いた。
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