冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
第二章 手に入れたものと失ったもの
第二章 手に入れたものと失ったもの
翔平とあんなことになってから、わたしたちの関係は変わった……ような変わっていないような。ふたりの関係をどう呼べばいいのかわからない状態が続いている。
でもまぁ、仲よくやっている……ような気はするけれど。でも突然恋人っぽくなれるわけもなく、恋人って呼べるのかどうかも怪しいのだけれど。
でも一緒にいると楽しいのは確かで、会うたびにどんどん惹かれていっているのは間違いなかった。
こんな風に言い合うことも多いけれど。
「ねぇ、ごめんってば」
人が行き交う金曜日の二十一時の歩道。わたしは前を歩く翔平の背中を追いかけていた。
「別に怒ってない。お前がまだ無駄な合コンに行こうとしていて呆れているだけだ」
「行こうとしてない! 先輩に誘われて、飲み会だって言うから」
職場の先輩に飲みに行こうと誘われた。すると半年前に合コンで会ったことのある男性が同席していたのだ。どうも……わたしに興味があったとかなんとか。
きちんと事前に男性も一緒だと聞いていたら参加しなかった。けれど今さら遅い。
だから翔平に連絡をして迎えに来てもらったのだ。この後近くで会う予定になっていたから少し面倒をかけるとは思ったけれど、そうすればわたしには相手がいることが一目瞭然だから。
でも……まあ翔平には不快な思いをさせてしまったな。
「ほんとに、ごめん」
わたしは、後ろから翔平の手を握った。すると彼が足を止めてくるりと振り返る。彼の顔を見て真剣に謝った。誤解されたくない。本当はこんなことで喧嘩なんかしたくないのに。
翔平はわたしの顔を見て「はぁ」と大きめのため息をついた。
「いいよ、別に怒ってない。ただ……」
「ただ?」
「自覚がないなって。いや、それは俺のせいか」
「ん? 自覚って? どうして翔平のせいになるの?」
彼の言っていることの意味がわからなくて、聞き直す。翔平は時々こういうことがある。頭の回転が速すぎてついていけない。
「まあいいさ。時間はたくさんあるんだからな」
「ねえ、なんのことなの?」