冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
 だからわたしのことをよく知らない人は、簡単に誰とでも寝るような軽い女だと思っている人もいるのは事実だ。そう思いたい人には思わせておけばいいと思い、特に訂正したりしないので余計にそういう噂が広がってしまっているのかもしれない。

 けれどきちんと自分を大切にしているという自負はある。

「はぁ~、またダメだったぁ」

 翔平に話を聞いてもらっていると、またもや悔しさがふつふつとわいてきた。好きだったとかまた会いたいという感情よりも、失敗してしまったことが悔しい。

 ここにきてやっとわたしは、彼のことは好きではなかったのだと気付く。好きだから彼と食事に行ったり連絡を取っていたりしたわけではない。ただ彼氏が欲しかっただけなのだ。今頃になって気が付いて我ながら呆れる。

「なあ、お前いい加減好きでもない男を好きかも?って思い込むのやめろ」

 その通りなのだ。だから今わたしはこんなに落ち込んでいる。

「わたしもしかしたら一生恋愛できないのかもしれない」

 小さい頃おとぎ話のように恋をして結婚したいと思っていた。

 今はそんなに甘くないとわかっているけれど、自分が思い切り好きになれる人がこの世のどこかにいると思っている。

 だけど……二十四歳の今、わたしには無理なのかもしれないと思いはじめた。

「瑠(る)璃(り)ちゃんとは随分違うな」

 瑠璃ちゃんというのは、わたしの姉で、翔平が院長を務める病院で看護師として働いている。
そもそもわたしと翔平がはじめて会ったのも、姉と参加した合コンでだ。

 姉には高校生の頃からずっと好きだった人がいた。誰もが憧れる王子様で、周囲の誰もが彼を落とすなんて天地がひっくり返っても無理だと思っていた。けれど姉はずっとその彼を思い続けて、結果粘り勝ち。彼と幸せな結婚を成し遂げた。

 結婚式のときの姉のあの晴れやかで幸せそうな顔を思い出すと、わたしも人生をかけた恋をしたいと胸が苦しくなる。

 でもそれも……無理そうだな……。

 こう何度も失敗続き、しかも恋愛にさえ至っていないとなると……もうこの先望みがないと絶望してしまう。

 どんなに努力しても叶わないことがある。

〝恋はするものじゃなくて、落ちるもの〟なんて言うしなぁ。

「はぁ……わたしも恋したい」
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