涙、滴り落ちるまで
「……つ、強い……!」
僕はその場から飛び退くと、透の近くに着地する。
「……攻撃が通らない……どこかに、弱点があるはずなんだけど……」
透の言葉を聞きながら、僕は悪霊をじっと見つめた。透の言う通り、どこかに弱点があるはず。
『……物理攻撃は通用しねぇよ。あいつは』
「……っ!」
最近聞かなくなった声が、頭に響く。
「……通用しない?というか、君は誰なの?」
『誰でも良いだろ。お前には関係ない……俺なら、あの悪霊を倒せると思うぜ?……俺と変われよ』
「……瑠依……?」
「……声が聞こえるんだ……俺と変われ、と。俺なら、あの悪霊を倒せる……と」
僕の言葉に、透は何かを考える仕草をした後僕を見つめた。
「……瑠依、恐らくそれは悪霊の声だ。瑠依は、恐らく悪霊に取り憑かれているんだ……」
――君も、ボクと同じなんだね
不意に、菫の言葉を思い出す。
そうか……そういうことだったんだ。
今やっと、前に菫が言ってた事を理解する。僕も、紫乃と菫と同じなんだ。
『……好きな方を選ばせてやる。星川 瑠依。俺と変わって悪霊を倒すか、俺と変わらずに皆が死んでいくのを見届けるかをな』
「……決まってる。僕の体は、君に貸す。だから……あの悪霊を浄化して……」