涙、滴り落ちるまで

揺れ動く




「……」

ライラ様の屋敷に集まった皆に、さっきの話をすると、晴輝は「……それ、大丈夫なの?」と首を傾げた。

「大丈夫なんじゃないの?瑠依の精神状態によるけど」

大人しく隅の方に座っていた紫乃は、そう言うと僕を見つめる。

「……悪霊って、その人の精神状態によって変わるんだよ。負の感情が強ければ強いほど凶暴になるし、弱ければ弱いほど大人しくなる」

「……菫の言う通りです。だから、あの時……彼は誰にも攻撃をせずに消えていったのですね」

紫乃の言葉に、ライラ様は全てを理解したように頷いた。

「あぁ、ボクが紫乃じゃないってことに気づいてたんだ?ライラさん」

「私を誰だと思っているんです?」

「ひぇ、怖いねぇ~」

そう言って、紫乃……じゃなくて菫はクスクスと笑う。

普段の紫乃と違うから、違和感あるなぁ……でも、こういう紫乃も良いかもしれない。

「攻撃をして来なかったってことは、僕の精神状態が安定しているから……ってこと?でも、どうして彼は消えたの?」

僕の言葉に、菫は黙り込んだ。皆が黙ってるせいか、周りの空気は重い……ような気がする。

「…………もしかしたら」

小さく、何かを思い出したかのように菫は呟く。

「……さっき、ボクが大人しくなる前のことを思い出してたの」
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