涙、滴り落ちるまで
「……そっか、名前がないと呼ぶ時に困るからな…………そうだ!静瑠(しずる)って、名前はどう?」

「は?」

「そう。静かって言う字に僕の名前の瑠って字を書いて、静瑠。どうかな?」

「…………勝手にしろ。でも、悪くはない……」

そう言って、少し恥ずかしそうに深い青色の髪の子――静瑠は、俯いた。

静瑠の横顔はどこか切なさが混ざっていて、少し辛くなってしまった自分がいる。

「……で、静瑠。話がしたいって言ってたけど……」

そんな自分の感情を誤魔化すように僕が話題を振ると、静瑠は顔を上げて僕を見つめた。

「ん?あぁ、どこかしんどそうだなって思ってな」

「……!」

静瑠の言葉に、僕は驚くことしか出来ない。僕を見た静瑠は「当たり前だろ」と呆れたような顔をした。

「何度も言わせるな。俺は、お前の負の感情から生まれた悪霊だ。それくらいは分かる……それに……」

「それに?」

静瑠は少し考える仕草を見せた後、「何でもねぇ」と僕から顔を逸らす。

「…………なぁ。瑠依にとっての、生と死ってなんだ?」

「……どういうこと……?」

「お前がどういった理由で生まれて、どういった理由で死んだのかってことだよ」

そう言って、静瑠はもう一度僕の方を見た。僕は、少し考えたあと口を開く。

「難しい質問、だね……でも、死んだ理由は分かる……生きづらかったから。苦しかったから……」
< 116 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop