涙、滴り落ちるまで
「……静瑠？あぁ……自我を持った悪霊の名前、だっけ？」

そう呟いた陽菜に僕が無言で頷くと、綾は「……私、その名前好きだなぁ」と微笑んだ。

「そういや、さっきのワープ……凄かったね。あれも、呪術なの？」

透の言葉に、僕は「静瑠が使ってたってことは、呪術なんだと思う」と返す。

『…………おい。瑠依……何か来るぞ』

急に静瑠の声が聞こえてきて、僕は辺りを見渡した。どこからかヒュッ、と何かが風を切る音が聞こえてきて、僕はその場から後ろへと大きく飛び退く。

僕がさっきまで立っていた場所には、長い黒髪の――クララ様がいた。

「……」

僕は地面に着地すると、クララ様を見つめる。クララ様は「星川瑠依、と言ったか」と僕に向かって手に持ってた剣を突き付けた。

「……どうして、僕を狙うのですか？僕を嫌ってる理由、あの時に教えてくれたこと以外にもある気がしますが……」

前に言ってたのは……確か……弱いくせに、死神になったから……だっけ？

「……嫌っている理由？教えるか、バカが」

僕の問いかけにそう答えたクララ様は、いきなり斬りかかって来る。その攻撃は全部速くて、避けるだけで精一杯だ。

「瑠依……！」

クララ様の攻撃を避けながら、視界に入った心配そうに僕を見つめる皆に向かって「僕は、大丈夫！」と声をかけた。

「お前、余裕そうじゃねぇか」
< 126 / 156 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop