涙、滴り落ちるまで
「……御札?」

「そう、母さん特製の御札だよ!これがあれば、霊力がない人でも悪霊を浄化出来る」

「……いや、僕……呪術扱えるし、なんなら死神でもあるんだけど……」

呆れたように僕が返すと、母さんは「分かってる。瑠依のことは、全部ライラ様から聞いてるから」と笑った。

僕の母さんは陰陽師で、僕の父さんは元死神なんだ。詳しいことは僕も良く分からないけど、父さんは僕が生まれてから、ライラ様に頼んで無理やり人間になったらしい。

母さんは、僕が前世の記憶を持ってることも悪霊ではなくなって、僕のもう1つの人格として存在している静瑠のことも知っている。僕が小さい頃に、ライラ様が僕の家に来たんだ。今でも、鮮明に覚えてる……。

その時、僕が前世で付けていた白い光の放つブレスレットを渡されて、それを付けると死神と同じ状態になることが出来るらしい。

「学校に行く前に、バイト先行くんでしょ?これ、団長さんに渡しておいて」

「……分かったよ。行ってきます!」

母さんに渡された紙袋を持って、僕は通学路を歩く。僕のバイト先は、僕の通学路にあるんだ。

しばらく通学路を歩いていると、サーカスをやってそうな建物が見えてきて、僕はその建物の前で立ち止まると建物を見上げる。

「大きくなったよな……僕が、前世で所属していたサーカス団も」

そう呟いて僕は建物の裏口へと回ると団員全員が持つ鍵を取り出して、鍵を開けると中へと入った。

「瑠依くん、待ってたよ」
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