涙、滴り落ちるまで
箱を取り出す前に何となく紫乃の方を向いてみると紫乃は畳の上で横になっていて、嫌な予感がした僕はすぐに紫乃に近づいた。

「紫乃!」と僕が声をかけても、紫乃は全く返事をしない。これが悪霊の仕業だと、すぐに判断した僕が移動しようとした時、僕の足首を誰かが掴んだ。

「……瑠依。僕のことはいいから、早く……ライラ様の所に……」

フラリと立ち上がりながら、紫乃は苦しそうにしながら僕を見つめる。僕は少し考えた後、口を開く。

「分かった……でも、この状況で紫乃を1人にするわけにはいかない」

僕は私服のポケットから、小さな刀のキーホルダーを取り出した。

このキーホルダーは、ライラ様と母さんが作った特殊なキーホルダーで僕の呪術と組み合わせることによって、静瑠を実体化させることが出来る。

キーホルダーを宙に投げるとキーホルダーが光って、僕の目の前に黒いパーカーを着た、深い青色の髪の静瑠が着地した。

「……静瑠、後は任せたよ」

僕は白い光を放つブレスレットを付けながら、静瑠の返事を聞くことなく走り出す。

後ろから静瑠の「おい!瑠依!」という声が聞こえて来るけど、無視無視。

家を飛び出して、ライラ様の屋敷まで猛ダッシュ。
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