涙、滴り落ちるまで
「……っ!」

僕のさっきまでいた場所には、淡い紫色の髪に紫の目をした男の子が短剣を片手に立っていた。

「……」

男の子は僕に向かって走ってくると、僕の手首を掴んで走り出す。

「……説明と自己紹介は後だ。一旦、引くよ」

次の瞬間、男の子は開いた黒い穴に飛び込んだ。すぐに景色は変わって、気づいたら僕らはどこかの森の中にいた。

「…………ここまで来たら、大丈夫かな」

そう呟いて男の子は立ち止まると、僕から手を離して僕の方を見る。

「瑠依、これ」

男の子は、僕に向かって何かを投げてきた。それを手で掴んで見てみると、静瑠を実体化させるために使っているキーホルダーと全く同じ物だった。

「……これは……」

「未来のライラ様に、渡すように頼まれた」

「未来のライラ様……?どうして、僕の名前を知って……?」

僕が首を傾げると、男の子は「実は、ボクたち……初めまして、ではないんだよ」と微笑む。

「初めまして、ではない……?」

「あ、でも……この姿で会うのは、初めてかな。ボクは、紫藤(しどう)菫。人間と死神のハーフで、転生前は悪霊だったんだよ」

男の子――菫は、笑顔を崩すことなくそう言った。
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